くぎ煮

昔、神戸へ来て間もない頃「いかなご」のことも、いかなごの稚魚を煮込んだ「くぎ煮(釘煮)」のことも知らなくて、春先(2月末~3月初め)になると多 くの家々でタイのあら煮のような香りがしていたので「へー、この辺りはタイのあら煮をする人が多いのだな!」と勝手に思っていました。やがてそれはいかなごと言う魚の稚魚(シンコ)を焚き、くぎ煮と呼ばれる佃煮にする匂いだと分かりました。くぎ煮と言われるのは、その佃煮が錆びて折れまがった 釘のように見えるからだそうです。くぎ煮を作る時期になるとスーパーや魚やの店先には、くぎ煮の幟が立ち、くぎ煮用のプラスチックの容器が並びます。毎年、くぎ煮をたくさん作り、友人や親戚などへ送る方も大勢いるようです。以上の話は以前に書いたことがあります。

 


さて、そのくぎ煮の材料になるいかなごの稚魚(シンコ)の漁獲量ですがですが、ここ5年間ほどは最盛期の半分ほどと不漁が続いているようです。不漁になれば、価格は上がり、特にたくさんの、くぎ煮を作る方には大きな負担となります。地元の名物として手作りの、くぎ煮を毎年贈っている方には大きな負担です。そして、その不漁の原因ですが、海(瀬戸内海)がキレイになっ たからだそうです。

 

日本の高度成長期には海の汚れ大きな問題となりました。魚介類が油臭い という問題がいたるところで発生しました。瀬戸内海は太平洋との出入り口がいずれも狭くて、海水の入れ替わりに1~2年かかるそうです。それだけ海水の滞留時間も長くなりそうです。海の汚れの原因は、工場排水や生活排水ですから、排水の浄化工事などに努力して、キレイな戸内海が戻ってきた と思ったら、水がキレイなので餌が少なくて、魚がれないとは!?.

 

昔から言う「水清ければ魚棲まず」とは、このことかと思います。
これまできれいな海を取り戻そうと官民挙げて努力してきたのに、もう一度汚すことも出来ません。海がキレイニなったことを喜ぶべきか!それとも、魚が獲れなくなったことを嘆くべきか!「水清ければ魚棲まず」とは、物事には程の良い加減と言うものがあることを示しているような気がします。 山と海は深い繋がりがあり、山の養分が海に流れ込んで海産物を育てることはよく知られています。具体的に、どんな手立てがあるのか、いかりじろうには分かりませんが、知恵を絞ってキレイ豊かな海を実現したいものです